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あとがき愛読党ブログ

本文まで読んでいることを保証するものではありません

あとがき13 ジョジョ4部小説、そして書き続けていた男:乙一『The Book 』(集英社、2007年)

 2015年到来!

 今年、1月からジョジョ3部アニメ「エジプト編」がいよいよ放送開始され、関係イベント、コラボ、グッズなど、今年のジョジョファンにはお楽しみがいっぱいです。


TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』公式サイト

 そう……『お楽しみがいっぱい』……

 

 今回はそれを記念し、ジョジョ4部の小説版、乙一『The Book 』のあとがきを取り上げたい。そう、あの、約何年にもわたる待ちぼうけの歴史を…!

******

 2002年に発行された少年ジャンプ増刊誌 『読むジャンプ』。
これに掲載されたのが、作家・乙一によるジョジョ4部のノベライズ「テュルプ博士の解剖学講義」だった。

 ジョジョ第4部の舞台であるS県杜王町で、小説オリジナルのキャラとともに、あらたな奇妙な出来事がおきるイントロ。なかなか期待できる手ごたえだった。

 といっても掲載されているのは序章だけ。同誌にはこのような告知があった。

小説の続きは来年2月発売予定の単行本で!!

 ジョジョファンたちの期待は高まった。

 しかし、その年の秋にすでに雲行きが怪しくなる。ファンが運営する老舗ジョジョニュースサイト「@JOJO【アットマーク・ジョジョ】」の過去ログを見てみよう。

@JOJO 2002/10/09
ジョジョ4部小説、乙一氏の執筆は難航中!?

http://atmarkjojo.org/archives/2003/200210.html#20021009

  そして、刊行予定の2003年2月を迎えた。しかし…。

@JOJO  2003/02/14

☆「イーエスブックス」読書のひきだし:乙一氏インタビュー
(…)乙一氏が”二月に刊行予定とされていましたが、おそらく半年ほど後ろにずれると思います。”と書かれているとか。

http://atmarkjojo.org/archives/2003/200302.html#20030214

  そして、続報。

@JOJO 2003/05/12

乙一氏のジョジョ4部小説、完成は「3年後までには」?
http://atmarkjojo.org/archives/2003/200305.html#20030512

  集英社は、2003年の秋には出すとの広告を打ったようだが、

JOJO  2003/07/10

乙一氏、ジョジョ4部小説が「今秋」との広告に対し、「保障できません」

http://atmarkjojo.org/archives/2003/200307.html#20030710

 そして、2003年末。

JOJO  2003/12/11

乙一「世界観や設定を借りて小説を書こうという試みです。」

宝島社『このミステリーがすごい!2004年版』の「私の隠し玉」に、乙一氏のコメントが掲載。『ジョジョの奇妙な冒険』のノヴェライズについて、「難航中なので発売時期が不明です。ちなみに、内容はオリジナルで、世界観や設定を借りて小説を書こうという試みです。」との事。(…)

http://atmarkjojo.org/archives/2003/200312.html#20031211

  そこからさらに飛んで、翌2004年末。

@JOJO  2004/12/09

☆「破棄した原稿は二千枚以上」 乙一ジョジョノベライズの現状を語る。

http://atmarkjojo.org/archives/598.html

  最初の刊行予定から2年弱。4部小説は出る気配すらなかった。

 出る出るといいながら出ない現状を前に、ファンたちは出会いがしらにお天気を話題にするように「あれはいつ出るんですかねえ」とあいさつし、無粋な男性を乙女が婉曲に袖にするため、「ジョジョ4部小説が出たらおつきあいしましょう」という常套句が流行したとか。

 これらは私が今拵えた話だが、ともかくこの4部小説は、年末のジョジョ界展望では必ず言及されるネタとなってしまった。

『ジョジョの奇妙な出来事2003』 | @JOJO ~ジョジョの奇妙なニュース~

「読むジャンプ」から1年以上過ぎました(遠い目)。 「妥協とかはしたくない」とはいえ、2004年中には、どうか完成させて下さい…。

『ジョジョの奇妙な出来事 2004』 | @JOJO ~ジョジョの奇妙なニュース~

2年以上経た今なお未完…(つД`) 。2005年中には、きっと…。

『ジョジョの奇妙な出来事 2005』 | @JOJO ~ジョジョの奇妙なニュース~

【終わりの無いのが終わり?】:乙一先生によるジョジョ4部小説
2004年末で、破棄した原稿は2000枚以上との事だったが…。

『ジョジョの奇妙な出来事 2006』 | @JOJO ~ジョジョの奇妙なニュース~

『読むジャンプ』から4年以上が経過。なんか毎年のマトメ記事の「オチ」みたいだ(^^;)。でも、今年は『ジョジョ20周年』ッ! 「なんとか……なんとか書き上げてくれる……はずだ、乙一先生 さもなきゃあ……」

そして…月日は流れ…「4部小説?ああ、そんなのあったね」とファンたちも忘れかけていた2007年11月。

『それ』はついに出たのだった。

The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day

The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day

 

 その名は『The Book』。「テュルプ博士の解剖学講義」の仮題は廃棄され、まったく別物として書き直されたのだという。ともあれホントに出るとは!衝撃がジョジョファンたちに走る。自分もすぐに買いにいった。当時の日記(2007年11月26日)にはこのように書いている。

「今日も授業はあったが、ひとっかけらも学校に行こうとは思わなかった。ジョジョ4部小説を買い、陽光差すリビングで一気に読んで、すごく面白くて、この上なく幸福だった。」

 そう、むちゃくちゃおもしろかったのだ。内容、文体、装丁にいたるまで、素晴らしい作品だった。なによりも、無数の引用と参照から、作者・乙一の原作愛を強く感じた。彼もわれらと同じ、ジョジョファンだったのだ。ページを繰っていくたびに、陽光が残雪を融かすように、長年のわだかまりが解きほぐされていくのがわかった。

 そんな自分がもっとも心打たれたのが、この本の「あとがき」だった。

「『ジョジョ』の第四部は小説にしないんですか? もしも書く人がいなかったら、書かせていただけませんか?」

 

それから五年間、僕は『ジョジョの奇妙な冒険・第四部』の小説を書き続けた。(…)しかしなかなかうまく書けなくて、ボツ原稿を大量生産した。原稿用紙四〇〇枚を書いては、気に入らなくてボツにする、というのを何回もくりかえした。この五年間で葬った自分の原稿は二〇〇〇枚以上になり、僕の収入は途絶えた。ボツ原稿ばかり書いて、新しい本が出ないのだから当然だった。しかたなく、別件の仕事を合間にやって生活費を稼ぎながら『ジョジョ』の小説を書いた。

五年間、この小説のことばかり考えていた。書いては消しをくりかえしているうちに、三回も家を引っ越して、結婚までしてしまった。そのうちに『デスノート』の小説や、『小説こちら葛飾区亀有公園前派出所』が刊行された。僕はあせった。あせりながらも、楽しかった。ジェイブックスで作家デビューしたのは、この仕事をするためなのだ、という充実があった。

 われわれジョジョファンたちが期待し、揶揄し、ついに忘却するにいたった長い年月、乙一はこの原稿を書き続けていたのだった。

 これ以外にも何作かジョジョのノベライズは出版されている。しかし、この乙一作『The Book』を読んだとき以上の感動は得られていない*1。表紙からあとがきまで含めて、この作品を読めたことを今でも幸せに思う。

 

なお、この「あとがき」には後日譚がある。この『The Book』は2011年に新書版が、

The Book jojo's bizarre adventure 4th another day (JUMP j BOOKS)

The Book jojo's bizarre adventure 4th another day (JUMP j BOOKS)

 

翌2012年には文庫版が出ており、手に取りやすくなっている。

The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day (集英社文庫)

The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day (集英社文庫)

 

 しかし、これら再刊版では原著の装丁(内容に密接に関わる!)や『街』が立ち上がってくるペーパークラフトなどのギミックがないので、ぜひ読むならハードカバー版の原著をおすすめしたい。

 百歩譲ってこれらに目をつぶるとしても、再刊版が一番問題なのは、なんと件の「あとがき」がキレイに削除されてしまっていることだ。読者への詫は一回でいいと思ったのかもしれない。

 ということで、本ブログでこの「あとがき」と経緯を記しておくのも、いくばくの意味があるかと思う。ささやかな使命感が私を駆り立てたのだった。

*1:でも、舞城王太郎ジョージ・ジョースター』は同率1位かも。また別のベクトルですごすぎる。

JORGE JOESTAR

JORGE JOESTAR