あとがき愛読党ブログ

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2018-01-01から1年間の記事一覧

あとがき31 陰謀はどこだ?:フィリップ・ロス『プロット・アゲンスト・アメリカ』

2018年5月、アメリカの作家・フィリップ・ロスが世を去った。本記事はロス追悼のため開かれた読書会「ロスろす会」で私がしゃべったペーパーが元になっている。 課題書 フィリップ・ロス作・柴田元幸訳『プロット・アゲンスト・アメリカ―もしアメリカが…―』…

あとがき30 奥書の1945:相田二郎写「書札次第」

本ブログ初の、奥書記事である。 相田二郎(あいだ, にろう, 1897-1945)は東京帝国大学史料編纂官の中世史家、古文書学者であり、佐藤進一の師匠格としても知られる。惜しくも終戦間近に夭逝したが、もし戦後も生きのびていれば、黒板勝美・辻善之助亡き後…

あとがき29 注の多い本:石井良助『新版 中世武家不動産訴訟法の研究』(高志書院、2018)

瀬野 昔の方の論文には、註はありませんものね。註ができたのは昭和に入ってからくらいでしょう? 註というのは読む人に一々後ろを見ろというもので失礼だと言われた年輩の先生もいらっしゃった。 ―玉村 竹二, 瀬野 精一郎, 今泉 淑夫「禅宗史研究60年―上―(…

あとがき28 未発の可能性:『原平三追悼文集』(私家版、1992)

年の瀬、京大前の古本屋で珍しいものを見つけた。 戦前の、シリーズものの予約募集冊子である。日本史関係でいくつか買うことにしたが、まったく知らなかったシリーズものばかりでおもしろい。 たとえば、蛍雪書院なる版元の、『歴史學叢書 日本研究篇』なる…