あとがき愛読党ブログ

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2014-01-01から1年間の記事一覧

あとがき12 卒論を断固出すための「断念」術: 小峯和明『今昔物語集の形成と構造』(笠間書院、1985年)

■あとがきより 年末ですね。卒論シーズンですね。この時期、さる本のあとがきを思い出します。 論文は科学を装った詩であり、論文を書くとは断念することだ。 ―小峯和明『今昔物語集の形成と構造』(笠間書院、1985年) 今昔物語集の形成と構造 補訂版 笠間…

あとがき11 著者名を信じるな!? :大類伸『列強現勢史・ドイツ』(冨山房、1938年)

大類伸(オオルイ, ノブル, 1884-1975)という、変わった名前の大物西洋史家がいた。東北大の教授だった人物だ。ルネサンス研究など文化史で一ジャンルを築き、日本の城郭史にも詳しい。国会図書館の目録で調べると、大類の著作は100以上引っかかる。本来の…

あとがき10 あとがきを信じるな!?: 網野善彦『無縁・公界・楽』(平凡社、1978年)

このブログのあとがき愛読もようやく10回目。それを記念し、今年没後10年の網野善彦を取り上げたいと思う*1。 無縁・公界・楽―日本中世の自由と平和 (平凡社ライブラリー (150)) 作者: 網野善彦 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 1996/06 メディア: 新書 購…

あとがき9 「つきあい」の可視化: 河野有理編『近代日本政治思想史』(ナカニシヤ出版、2014年)

瓦経というものをご存知だろうか。 粘土板にお経を刻んだものだ。 瓦経|奈良国立博物館 なぜか平安時代ごろから、この瓦経を大量に作って土に埋めることが流行りだした。 それが父母の供養や自分の極楽往生に効くと思われていたらしい。 瓦一枚につき200字…

国会図書館デジコレで中世史! 叢書編

国立国会図書館デジタルコレクション(デジコレ)がWEB公開している資料は、約35万点。その膨大な書籍のうち、日本中世史の研究に役立つ文献をリストアップするのがこの記事の目的です。 まずはその第一段として、叢書類(日記や編纂物、軍記など)、および…

中世古文書の画像が見れるデータベースまとめ稿

※随時更新(2020/4/25 最新16訂: 京大の淡輪文書、佐賀県立図書館を追加)。情報募集中! 「信長の印章ってどんな感じだっけ?」 「あの武将の花押が見てみたいなあ」 「本の図版に使う古文書を探してるんだけど」 そんなお悩み、ウェブで解決しましょう。ネ…

あとがき8 【ゲスト投稿】長大なる自分語りの祖 : 司馬遷『史記』その②

二歩博士の論考後編、出来!前編はこちらで。 あとがき7 【ゲスト投稿】長大なる自分語りの祖 : 司馬遷『史記』その① - あとがき愛読党ブログ 史記〈8〉―列伝〈4〉 (ちくま学芸文庫) 作者: 司馬遷,小竹文夫,小竹武夫 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 199…

あとがき7 【ゲスト投稿】長大なる自分語りの祖 : 司馬遷『史記』その①

以前執筆していただいた二歩博士から、再び玉稿を頂いた。長編のため、前後遍として掲載することにする。ご味読いただきたい。 ********** 【提要】 史記』の先秦諸子に関する列伝には、その文献・学術・学派に対する「序」の性質がある。 司馬遷…

あとがき6 あとがきはなぜ必要なのか: 小熊英二『単一民族神話の起源』(新曜社、1995年)

あとがきは、本当に必要なのだろうか? (特に)人文系学術書の、長くて、情緒纏綿で、多分に私事に渉るあとがきは、たとえば理系の人士の目にはいかに映るのだろうか。 小熊英二が最初の単著に書いたあとがきは、それへのアンチテーゼであったのだろう。 (…

あとがき5 見ること知ること生きること: 小林正人「研究者になるまで」

東大文学部のHPで見つけた文章がすごくよかったので、紹介したい。 小林正人(言語学)「研究者になるまで」 http://www.l.u-tokyo.ac.jp/teacher/essay/2013/3.html 私は気が弱い。およそプレッシャーというものが苦手で、受験競争がいやで高校を辞めたほど…

あとがき4 「造反教官」の1970年 : 佐藤進一『日本の中世国家』(岩波現代文庫、2007年)

佐藤進一(1916~)。日本中世史の研究者である。饒舌ではないが、その篤実な仕事ぶりは良く知られる(その一例は、http://newclassic.jp/2072 )。書いた論文や著書は決して多くはない。「確実なことをできるかぎり少なく書く、という実証史家の道徳律*1」…

あとがき3 【ゲスト投稿】お星様の話:喬秀岩『義疏学衰亡史論 東京大学東洋文化研究所研究報告』(白峰社、2001年)

今回はなんと、いきなりゲスト投稿である。わが大先輩、二歩氏からの玉稿を賜った。「第三回目にして!?」と思われるかもしれないが、このまま本ブログをあとがき公共圏として育てていきたいので、どしどし投稿してほしい。それではご賞味あれ! *****…

あとがき2 刊行遅延20年:塩尻公明・木村健康訳『ミル 自由論』(岩波文庫、1971年)

世に出でて花を咲かせた一冊の本の根本には、関わった多くの人間の苦悩と葛藤が埋まっている。それをうかがい知る窓が、あとがきである。 それゆえ、苦悩が大きければ大きいほど、葛藤が深ければ深いほど、あとがきは渋く味わい深いものとなる。 ということ…

あとがき1 歴史小説家と歴史家:『豊田武著作集第6巻 中世の武士団』(吉川弘文館、1982年)

豊田武(1910~1980)といえば、長く東北大の教授を勤めた大歴史家。8巻組の著作集がある。この豊田武、かの吉川英治と旅行したことがあるという。 吉川英治のエッセイ「吉川英治 随筆 私本太平記」曰く、それは1958年の5月下旬のこと。『私本・太平記』連載…